弱視とは?子どもの視力は回復する?
弱視とは、視力の発達が障害されて眼鏡をかけても視力が上がらない状態のことをいい、単に近視などで目が悪い状態とは異なるものです。3歳児健診や学校の就学時健診などで指摘されて驚いたという保護者の声も多く聞かれますが、子どもの弱視は、早期に治療を始めることで視力の回復が見込まれます。この記事では、早期発見・早期治療の重要性と、弱視の種類や治療法などについてご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね。
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弱視とは?
弱視とは、片目または両目の視力の発達が妨げられたことによる低視力のことを指します。弱視の子どもは約50人に1人といわれており、決して珍しいことではありません。
弱視の場合は眼鏡やコンタクトレンズなどをしても視力が十分に出ないため、単に近視などで目が悪い状態とは異なります。裸眼の視力が0.1以下であっても、眼鏡やコンタクトレンズで矯正して1.0以上見えるなどの場合は「弱視」ではありません。
子どもの視力の発達
子どもの視力は、成長に伴って発達していきます。毎日、目を使って様々なものを見て、物の見方を学習し、何年もかけて見る能力を獲得していきます。
生まれてすぐの赤ちゃんはハッキリ見えるわけではなく、明るいか暗いか程度しか分かりません。生後1〜2か月で形や色が見え、生後4か月頃になると動くものを追って目を動かせるようになります。視力は3歳頃までに急速に発達し、個人差はありますが、5歳頃には約8割の子が1.0に達し、6〜8歳頃には大人と同じくらい見えるようになるといわれています。この視力の発達過程で、何らかの理由により視力の発達が妨げられると、眼鏡などで矯正しても目がよく見えない弱視の状態になります。
弱視は早期発見が重要
弱視の最初の治療には、主に眼鏡やアイパッチを使います。
しかし、小さい子どもが眼鏡をかけるとなると、
小さいうちから眼鏡をかけさせるのはかわいそう…
眼鏡は不便だし、もう少し大きくなってからでいいんじゃない?
と思ってしまったり、周囲からそのように言われたりすることがあります。ですが、子どもの視力の発達にはタイムリミットがあります。弱視は早期に治療を開始するほど改善しやすいため、3歳くらいまでに弱視を発見できると、視力はかなり回復するといわれています。悩んでいる間に時間が経つと、せっかくの治療の機会を失うことになりかねません。将来的に車の免許取得やその後の生活の大きなハンデになってしまう可能性もありますので、周囲の大人が気を付けながら、早期発見・早期治療を意識しましょう。
視力の発達期間である8歳頃を過ぎると、治療が難しくなります。ただし、治療開始が10歳を過ぎても視力が改善する可能性もあると分かってきているので、あきらめずに眼科で相談してみましょう。
子どもの弱視に気付くには?
子どもは、たとえ片目が見えていなくても、見えるほうの目だけで不自由なく生活するので、子ども自ら「見えない」と訴えることはほとんどありません。自分の見える世界が当たり前と思って過ごしているため、子どもの弱視は家族や周囲が気付きにくいのです。
以下ような「見えづらい」サインで気付くことができる場合もありますので、気になるしぐさがあるときは小児科や眼科で相談しましょう。目を細めて物を見る、まぶしそうにする
テレビや絵本などに極端に顔を近づける
細かいものを見落としたり、見ようとしない
横目(上目、下目)で見る
顔を傾けて見る
片目をつぶるなどのくせがある
試してみよう!弱視のチェック子どもが絵本を読んでいるときなどに、片目ずつ隠してみましょう。片目だけが見えづらい「不同視弱視」の場合、良い方の目だけで見ている可能性があります。目がよくても隠すと嫌がる子は多いですが、左右で反応が違う、極端に片方だけ嫌がるような場合は注意してください。
また、比較的気が付きやすいといわれる「斜視弱視」(左右の目の視線が違う方向を向いている状態)でも、片目の視力は正常に発達していて、斜視の程度が軽い場合、見た目ではほとんど分からないことが多いようです。健診などで斜視を疑われた場合や、子どもの視線に少しでも違和感を覚えた場合は、様子を見るのではなく一度眼科で診察してもらいましょう。
3歳児健診での屈折検査
厚生労働省では、乳幼児の弱視等は早期発見することで治療が可能 であり、中でも屈折検査は片眼性の弱視等を検出するのに有用であることから、3歳児健診で屈折検査を行うよう各市区町村に呼びかけています。令和4年10月時点で弱視の検査を実施している市区町村は70%という調査結果がありますが、その後もさらなる屈折検査の導入が進んでいるようです。
3歳児健診等の検査で見つかるケースも多い、子どもの弱視。3歳児健診で視力をきちんと測って、両方の目が見えていることを確認しましょう。弱視の種類と治療法
弱視治療の効果が出るのは、視覚の感受性期と呼ばれる、子どもが8歳頃までの期間といわれています。できるだけ早い時期に見つけて眼科を受診し、適切な治療を開始することで、子どもの視機能を最良の状態まで育てることができます。
屈折異常弱視(くっせついじょうじゃくし)
屈折異常弱視とは、遠視や近視、乱視が両目とも強いために起こる視力障害です。常にぼやけた状態でしか見えないので、視力が発達しません。正確な屈折値を調べるために、目薬を点眼をして検査をします。
屈折異常弱視の治療法
主に、適切な矯正用の眼鏡をかけて治療します。
不同視弱視(ふどうしじゃくし)
不同視弱視とは、視力の右左差が大きいために起こる、片目の視力障害です。見やすいほうの目を使い、見にくいほうの目を使わないために片目の視力が発達しません。片目が見えているために周囲が気付きにくいことが多いようです。
不同視弱視の治療法
主に適切な矯正用の眼鏡をかけ、常に両目ともピントが合う状態にして治療します。また、見にくいほうの目だけで見るアイパッチ等を用いた訓練(健眼遮閉:けんがんしゃへい)をすることもあります。
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斜視弱視(しゃしじゃくし)
斜視とは、右目と左目の視線が違う場所に向かっている状態です。中心部にまっすぐ光が入らず、視力が育たないため弱視になります。
斜視弱視の治療法
主な治療は、適切な矯正用の眼鏡をかけたり、アイパッチ等を用いた健眼遮閉訓練を行ったりなどの弱視治療と、斜視手術を組み合わせることが多いようです。
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形態覚遮断弱視(けいたいかくしゃだんじゃくし)
形態覚遮断弱視とは、生まれつきの白内障(先天白内障)や眼瞼下垂、眼帯使用などにより、片方の目を使わない期間があるために起こります。
形態覚遮断弱視の治療法
主に、弱視の原因となる病気を取り除く治療を行いますが、経過観察の中で屈折矯正や健眼遮閉などの弱視治療も行われます。
弱視用眼鏡をかけたらすぐ見える?
弱視の治療用眼鏡は、通常の近視や遠視などの眼鏡と違い、かけてすぐ見えるわけではありません。 眼鏡をかけ続けることで、徐々に視力が向上していきます。しかし、小さな子どもが眼鏡をかけるのはとても大変。家族で励まし、保育園・幼稚園などに通っている場合は、協力をお願いしましょう。子どもが眼鏡を嫌がるような場合は、好きな色や柄のフレームを子どもに選ばせたり、子どもが眼鏡を好きになれるように声掛けしたりしながら、装着を続けられるようにしましょう。
弱視治療用の眼鏡の購入費用は保険適用
9歳未満の子どもの弱視・斜視治療用眼鏡※の購入には、健康保険が適用されます。(平成18年4月1日~)
※治療用の眼鏡の場合のみ適用で、視力矯正用の眼鏡は対象外眼科で検査を受けて、眼鏡店などで眼鏡等を全額自己負担で購入後、必要な書類を加入して健康保険へ提出すると、後日購入金額の一部が療養費として支給されます。
申請に必要な書類等
- 眼科医の「治療用眼鏡等」の作成指示書の写しおよび検査結果がわかる資料
- 治療用眼鏡購入時の領収書
- 療養費支給申請書(国民健康保険、全国健康保険協会、健康保険組合、共済組合などの、加入している健康保険にて発行)
- 子どもの健康保険証
- 振込先の金融機関口座番号がわかるもの
- 捺印のための印鑑
など
※詳細は各健康保険組合のホームページ等でご確認ください。また、眼鏡購入費用の自己負担額に対して自治体による助成を受けられる場合もあります。助成金の申請には期限が設けられている場合が多く、お住まいの市区町村ごとに条件も異なりますので、早めに確認しておきましょう。
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