- 対象期間
- 主に生後6か月~5歳頃
- 費用・価格
- 診察代+治療費(治療を行う場合)
マンガ「熱性けいれん」
熱性けいれんとは?
熱性けいれんとは、主に生後6か月〜5歳までの乳幼児期に起こる、通常38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)のことです。熱以外に明らかな発作の原因(髄膜炎などの中枢神経系の感染症、代謝異常など)が見られないもので、てんかんの既往歴がない場合に、熱性けいれんと診断されます。
熱性けいれんの種類
熱性けいれんには「単純型(典型的)熱性けいれん」と「複雑型(非典型的)熱性けいれん」があります。
単純型(典型的)熱性けいれん
全身のふるえ(全般発作)が15分未満で治まるもので、熱性けいれんのうち8割程度がこの単純型といわれています。
複雑型(非典型的)熱性けいれん
以下の3項目に一つ以上該当するものが「複雑型(非典型的)熱性けいれん」と定義されています。
- 焦点性発作(部分発作)の要素がある(身体の片側だけ震えるなど)
- 15分以上持続する発作(途中で停止時間をはさむ場合も含む)
- 一度の発熱で繰り返し起こったり、24時間以内に2回以上起こったりする発作
単純型の場合には、典型的な熱性けいれんと判断することができ、詳しい検査を必要とすることが少ないですが、複雑型やけいれん重積(20~30分以上の長く続くけいれん発作)の場合は、他の疾患との鑑別のために、入院して詳しい検査が必要となる場合が多くなります。
熱性けいれんの発症率
日本では5〜10%程度の子どもが熱性けいれんを起こすといわれています(西欧では3%程度)。脳に後遺症が残ったり命に関わったりすることは少なく、基本的に予後が良好な疾患です。また、男児にやや多い傾向があります。
熱性けいれんは遺伝的な要因も
熱性けいれんになった子どものうち、30%が再発するとされており、遺伝的な要因もあります。ママやパパに熱性けいれんの既往歴があると、発生の頻度が2〜3倍多くなるといわれています。
熱性けいれんの原因と症状
熱性けいれんは、発熱に伴って起こる発作性疾患です。子どもの脳神経細胞は発育途上にあり、急な体温の変化に弱いために起こるといわれています。
けいれん時の子どもの様子
個人差はありますが、以下のような症状があります。
- 発作の前に、一瞬ぼーっとしていることもある
- 両方の手足をピーンと硬くつっぱった後、両手・両足をガクガクふるわせる(多くの場合けいれんの症状は左右対称だが、稀に片方の症状が強く出ることがある)
- 身体を反るように硬くすることもある
- 黒目が上にあがって白目をむき、唇が紫色になることもある(チアノーゼ)
- 意識がなく、名前を呼んでも反応がない
- けいれん後に吐いたり、失禁したりすることもある
けいれんを伴わない「非けいれん性」
熱性けいれんでは、けいれんを伴わず体の力が抜けて、ボーッとして意識がなくなる、または、一点を凝視する、眼球が上転するのみ、といった「非けいれん性」の場合もあります。
発熱を伴うけいれんはすべて熱性けいれん?
発熱を伴うけいれんがすべて熱性けいれんというわけではありません。脳の細菌・ウイルスによる感染症、脱水症、電解質の異常などによって、けいれんが起きることもあります。熱性けいれんは、すぐに治まり後遺症も残らない、予後が良好なケースがほとんどですが、初めて発熱と共にけいれんを起こした場合には、他の病気である可能性も考えられますので、医療機関を受診しましょう。
熱性けいれんを発症しやすい時期は?
最も発症しやすい時期は、生後6か月〜3歳頃といわれています。成長と共に頻度が減り、6歳前後ではほとんど起きなくなります。後遺症は残らず、予後が良好なケースがほとんどです。
熱性けいれんが起きたら
熱性けいれんは体温が上昇してすぐに起こることが多く、けいれんが起きて初めて、保護者が子どもの発熱に気付くケースもあります。けいれんが起きると、子どもの様子に驚き、大人がパニックになりやすいため、落ち着いて対処することが大切です。
また、「早くけいれんを止めなければ」「早く熱を下げなければ」と感じるかもしれませんが、けいれんを止める目的で解熱剤を使うことは推奨されていません。けいれんが起こったら、まずは次の対処法を参考にしてみてください。
熱性けいれんが起きた際の対処法
①あわてず、まずは落ち着く
保護者がパニックになってしまうと、適切な対処ができなくなってしまいます。意識のない子どもに驚いてしまうかもしれませんが、まずはママやパパが落ち着くことが重要ポイントですので、十分に心がけましょう。
②子どもを安全な場所に「横向き」に寝かせる
嘔吐する可能性があるため、顔や身体を横に向けます。けいれんがひどい場合は無理に横にしようとせず、おさまりかけたらで大丈夫です。また、「舌を噛まないように」などと口の中に布を詰めたり、無理に飲み物や薬などを与えたりしないようにしましょう。窒息や誤嚥の危険があります。
③けいれんがどれくらい続いているかなどを観察する
けいれんしている時間を計り、記録します。
- けいれん発作が始まった時刻
- 発作の始まりから終わりまでの時間(何分続いたか)
- 発作の症状(手足の震えは、左右両方か片方か、目はどちらを向いていたか、また、白目になったときに黒目がどちら側に向いたか等)
初めて熱性けいれんを目の当たりにすると、慌ててしまい、うまく子どもの様子を記録することができないかもしれません。そんなときは、スマートフォンなどを使い、動画で撮影しておくのもおすすめです。医師や救急車を呼んだ時に救急救命士に症状を伝えやすくなります。
④医療機関を受診する(状況次第では救急車を要請する)
けいれんが5分以内におさまり、すぐに意識が戻った場合でも、医療機関を受診もしくは電話相談をしましょう。
初めてけいれんを起こした場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
救急車を呼ぶ目安
- けいれんが5分以上続く場合
- 顔色が不良(唇が紫になり、チアノーゼを起こしている)である場合
- けいれんが5分以内におさまっても、意識が戻らない場合、または、再度けいれんが起こった場合
※子どもが過去に熱性けいれんの経験があり、予防薬としての座薬を処方されている場合は、処方された際の医師の指示に従いましょう。
熱性けいれん時にやってはいけないこと
- 口の中にものを入れてはいけません
「舌を噛まないように」などと無理やり口の中にものを入れないようにしましょう。けいれん後に嘔吐することがあるので、口の中に物を入れることは、窒息や肺炎の原因になる危険性があります。 - けいれんを止めようとしないでください
けいれんは止められるものではありません。大声で名前を呼んだり、ほっぺをたたいたり、体をゆすったりして、けいれんを無理やり止めようとしないでください。
熱性けいれんの治療や予防
熱性けいれんは、ほとんどの場合は解熱以外の治療を行いません。しかし他の要因によるけいれんも可能性として考えられるため、初めての熱性けいれんでは、必ず医療機関を受診しましょう。必要に応じて、予防薬の処方や脳波検査をする場合もあります。
熱性けいれんの予防座薬
熱性けいれんは、症状によって、けいれん予防の座薬を投与する場合があります。
ダイアップ座薬(一般名:ジアゼパム坐剤)
けいれんの予防効果は高いものの、副作用(眠気やふらつき、興奮)も存在するため、積極的に処方されるものではなく、適用基準を満たす場合に使用します。
- 15分以上持続する発作の既往がある場合
- 以下のうち、2つ以上を満たした熱性けいれんが2回以上繰り返した場合
- 熱性けいれん出現前から存在する神経学的異常・発達遅滞がある
- 熱性けいれんまたはてんかんの家族歴がある
- 生後12ヶ月未満
- 発熱後1時間未満での発作
- 38℃未満での発作
熱が上がる際にけいれんを起こすため、予防としてのダイアップ投与のタイミングは、37.5℃以上になった時(熱が高くなる前)です。ダイアップを処方された際の医師の指示に従いましょう。
熱性けいれんは繰り返す?てんかんへ移行する?
熱性けいれんは一生に1回だけのことが多いですが、中には繰り返す子もいます。
再発が予測される因子
- 両親のいずれかに熱性けいれんの既往歴がある
- 1歳未満の発症
- 短時間の発熱-発作間隔(概ね1時間以内)
- 発作時の体温が39℃以下
上記のいずれかに該当する場合、再発の確率は2倍以上になります。再発予測因子をもたない熱性けいれんの再発率は約15%で、再発予測因子がある場合も含めた熱性けいれん全体の再発率は約30%になります。
稀にてんかんへ移行することも
熱性けいれんのうち、3〜5%はてんかんに移行するといわれています。8〜9歳でもけいれんが起きる場合は、脳波検査や抗てんかん剤の内服治療が必要になることがあります。
てんかんへの移行率が高くなる場合
- 複雑型(非典型的)熱性けいれん
- 家族に熱性けいれんの既往歴がある
- 1歳未満の発症
上記に該当する場合は脳波検査を行うことが多く、初診で脳波検査を行う場合もあります。
まとめ
熱性けいれんは、一般的な子どもの発作性疾患ではありますが、実際に目の前で起きると親がパニックになりがちです。熱性けいれんが起きた際の症状はどんなものか、起きたらどうしたらいいのかを事前に知っておき、いざというときの冷静な対処につなげましょう。
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良かったねー‼︎
大変〜
これで安全に支障がでたら、どうするつもりなんだろうね国は、従来の10歳まででいいよ