他の子と比べて、「うちの子は普通?」と心配してしまうことありませんか?心配の原因は子どもにあるのではなく、親自身の心の中によるものかもしれません。子どもを幸せにし、ストレスに強い人間へと育むには、どんなことが大切なのでしょうか。峯村敏弘園長先生(シンガポールのイーズ・インターナショナル・プリスクールの創設者で園長)と一緒に学んでいきましょう。

2025.02.26
第6回

うちの子ども「普通」ですか?

こそだてDAYS
「うちの子どもは『普通』ですか」というテーマですが、そもそも「普通」とは何なのでしょうか。
峯村先生
子どもはみんな、普通です。ご安心ください。誰一人同じ子どもはいないですし、それぞれ千差万別、いろんな子どもがいて当たり前です。みんなある程度個性的で生まれてきて、それがだんだん成長とともに飛び出している部分がマイルドになったり、足りないところが伸びたりします。その伸び方は人それぞれ違いますので、その瞬間だけをとらえて心配する必要は全くありません。
峯村先生
よく自分が思うんですけれども、不幸になる方法って一番簡単です。自分の子と他の子を比べると、すぐ不幸になります。自分の子の足りないところばかりが見えてしまうので、あの子は運動ができて、この子はおしゃべりができて、この子は手が器用で…と比べていると、全部できた子どもが「普通」のように思ってしまいます。でも、そんな子はどこにもいません。
逆に、幸せになる方法は、自分の子どもの「今」と「過去」を見ること。「小さく生まれた子がこんな大きくなったね」「こんな力強くなったね」「こんなにいっぱいしゃべれるようになったね」というふうに、過去の子どもと今を比べると、とても幸せになりますし、そういう意味ではみんな「普通」です。どの子も本当に幸せに成長していきますので、保護者の方は安心してほしいと思っています。
T.Nさん(7歳児と2歳児のママ)
自分の子だけを見ている分には「普通」だと思っていたのが、外に出て、他の子どもや先生などと関わりを持った時に、そこでトラブルを起こしてきて、「あれ?ちょっとうちの子、大丈夫かな?」って…。 そういうきっかけがあって心配になります。
活発すぎて、落ち着いて先生の話が聞けなかったり、逆にランドセルを背負って学校に行くまでに疲れてしまったりすると、もしかして運動不足なんじゃないか?と感じたり。「スイミングなどの習い事をやらせて体力をつけた方がいいんじゃないか?」とか、すぐに何かで解決しようとしてしまうんです。
峯村先生
そういう場合、まず、99%の子は問題ありません。
問題なのは、お母さんたちの心の中。子どもに芽が出て色がつき始めた頃に、赤い花で咲こうとしている子どもを見ると、「あれ?うちの子、青い色はないの?」と、青い色が必要な気持ちになってしまうんですよね。そして青い色で咲こうとすると、やはり「赤色がないの?」「黄色はないの?」と思ってしまう。
けれど、全部の色(能力)を持っている子どもなんていないんです。やはり赤い花はきれいに赤く咲くこと、青い花はきれいに青く咲くことを目指していかないと、子どももお母さんも常にないものねだりになっていきます。
何を目指すかというと、「子どもたちを幸せにする」ということだと思うんですよね。幸せに育っていくために、今何をしたらいいか…というのを考えていくと、そんなに難しいことじゃないんじゃないかなという気がします。
こそだてDAYS
ただ、お母さんたちの中には、幸せに育てたいと思って親独自のゴールを設定して、「こんなふうになってくれたらいいな」と思う方がいらっしゃると思うんです。
峯村先生
ゴールを設定するのは、実は親ではなくて子どもなんですね。親が求めるゴールというのは、あるとすれば「子どもの自立」です。子どもが自分で考えて、自分で判断して、自分で行動する。自分で価値観をちゃんと作っていくということが大切になってきます。
子どもは親にとても忖度しますので、親の望んだ子どもになりたいというのは潜在的に持っています。ですから、親の望むことではなくて「子どもの価値観は子どもがクリエイトしていく。そのためには、子どもが自分で考えて、判断して、行動するということが大切だ」ということを、親自身がしっかり自分に言い聞かせて子育てしていくことが大切です。それによって、子どもが成長していくし、幸せになっていくし、ストレスにも強くなっていきます。
自分以外の誰かの価値観で育っていくと、変えることができないですよね。そのためにはやはり、自分で考える力。正しい答えを求めるのではなくて、自分で考えていく能力というものが、特にこれからの時代は必要だと思っていますね。
こそだてDAYS
やはり親の価値観だけだと、子ども自身が自立していかないし、自分での修正能力もなくなってしまう。そこは気をつけていかなければいけないですね。

まとめ

  • 子どもは千差万別
    比べるのは他人とではなく子どもの過去と今
  • 子どもが持っていない色を気にするのではなく
    それぞれの色の花をきれいに咲かせよう
  • 親が目指すゴール設定は子どもの自立
    それが子どもの幸せにつながる
峯村敏弘
シンガポールのイーズ・インターナショナル・プリスクール創設者
東進スクール、日能研を経て1998年よりシンガポールに住む。 「子どもたちの今と未来を幸せにする。」を模索した結果、当地にEis International Pre-School及びキッズルー&ママルーや学習塾KOMABAを創設。 当地以外にもインドネシア(ジャカルタ)、フィリピン、日本において教育事業を展開。さらに特別支援教育を始め、広く日本人子女のための教育活動を行なっている。

こんなアドバイスもあります。