- 対象期間
- 計画無痛分娩の場合は、正期産(妊娠37〜40週頃)に行われることが多い。自然に陣痛を待つ場合は、陣痛や破水などが起きてからとなる。
- 費用・価格
- 通常の分娩費用+10~20万円程度
マンガ「無痛分娩」
無痛分娩とは?
無痛分娩は、麻酔を用いて陣痛の痛みを和らげる分娩法です。無痛分娩には「硬膜外麻酔(こうまくがいますい)」や「静脈点滴やガスによる麻酔」等が用いられますが、一般的には硬膜外麻酔である場合が多いです。痛みを軽減することで血圧の上昇を抑えることができるため、医学的には母体の心臓疾患や重症妊娠高血圧等の妊婦さんを無痛分娩の対象としていますが、無痛分娩の90%以上が、本人の希望により実施されています。
無痛分娩によって出産の痛みが和らぐため、分娩の恐怖心や痛みからくるストレスの軽減、分娩の遅延やパニックを防ぐことができます。ただし、全ての病院で無痛分娩ができるわけではなく、日本産婦人科医会「分娩に関する調査」によると、無痛分娩を行っている病院は全施設の30%程度です。無痛分娩を希望する場合、病院選びの際には無痛分娩に対応しているか確認をしましょう。
硬膜外麻酔とは?
硬膜外麻酔は、外科の手術などでも用いられる最も一般的な麻酔です。麻酔を行うときは、背中から硬膜外に細いチューブを挿入し、麻酔薬の投与を少量から開始します。これにより、腰部から足先までの感覚を鈍らせますが、この麻酔薬は「痛みや刺激を脳に伝える神経」に作用するため、足先は動かすことができます。意識もはっきりしており、子宮が定期的に収縮する感覚や胎児が降りてくる感覚もあるため、胎児の回旋に合わせて母体がいきむこともできます。つまり痛みが限りなく少ない状態で、自分の力でお産をすることが可能です。
日本における無痛分娩の割合
日本ではまだ自然分娩の割合のほうが多いですが、海外(欧米)では無痛分娩は一般的に普及している分娩方法です。令和2年(2020年)の厚生労働省の調査によると、無痛分娩を選択している妊婦は一般病院では全体の9.4%、一般診療所では全体の7.6%となっています。
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無痛分娩と和痛分娩の違い
分娩について調べると、和痛分娩(わつうぶんべん)という単語も目にするかもしれません。和痛分娩も分娩時の痛みを和らげ、恐怖や痛みといったストレスを軽減することを目的に行われる分娩方法で、無痛分娩と和痛分娩にはガイドラインなどの明確な取り決めがなく、ほぼ同義語として使われていることが多いです。病院によっては使い分けていることもあり、無痛分娩の場合、多くは硬膜外麻酔を用いて行う分娩方法で、どの病院でもほぼ同じですが、和痛分娩は病院によって内容が異なります。
和痛分娩の例
- 無痛分娩と同じ意味で和痛分娩という言葉を用いている場合
- 陣痛が強くなった時に鎮痛剤を投与する分娩方法を「和痛分娩」としている場合
- ラマーズ法やソフロロジー法などの呼吸法や、リラクゼーション効果のある陣痛室の構造などの全体を指して「和痛分娩」としている場合(麻酔は使わない)
など
「和痛分娩」の定義は、病院によって内容が異なります。ご自身が希望する分娩方法かどうかを必ず確認するようにしましょう。
無痛分娩の種類
無痛分娩は、計画的に行う場合と自然に陣痛が来てから行う場合の2種類があります。無痛分娩を希望している場合、計画無痛分娩を行うことが多いようです。希望する無痛分娩の方法をあらかじめ病院に伝え、申し込み手続き等を行う必要があります。
計画無痛分娩
計画無痛分娩の場合、妊娠37週を過ぎ、母体がお産の準備ができているかを見て医師が分娩日を決めます。子宮口の状態や頸管の成熟度、胎児の成熟度などみて、出産が近づいているかどうかが判断のポイントになります。母子ともにお産の準備が整っていれば、分娩日を決め、陣痛誘発剤を使ってお産を進めます。
中には、計画無痛分娩を予定していても、予定日よりも早くお産が始まってしまうことがあり、お産の進行が早ければ麻酔が間に合わないこともあります。お産は個人差が大きいものですので、必ずしも予定通り、希望通りにいかない可能性があることは、あらかじめ理解しておきましょう。
自然に陣痛が来てから行う無痛分娩
総合病院などの大きな病院で、24時間いつでも無痛分娩の受け入れが可能な場合、自然に陣痛が始まってからの無痛分娩に対応していることもあります。
しかし稀に、分娩の進行が非常に早く、陣痛が来て病院に到着したときの状況によっては、急いで麻酔をするよりも、そのまま麻酔なしで産んだ方が母子にとって良いという場合もあります。母体や胎児の状況を見て主治医が判断しますので、必ず無痛分娩が出来るとは限りません。その可能性も踏まえて、計画無痛分娩とするか、陣痛が自然に始まるのを待つか決めましょう。
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無痛分娩にかかる費用
無痛分娩の費用は、病院によって価格差はありますが、通常の分娩費用+10~20万円前後(保険適用外)であることが多いです。計画無痛分娩か、陣痛が来てから無痛分娩を行うかでも価格が変わることがあります。
なお、お産の進行が早く麻酔が効く前に赤ちゃんが生まれたとしても、麻酔を施していれば費用がかかることになります。
無痛分娩の流れ・方法
計画無痛分娩の場合
誘発による計画無痛分娩の場合、あらかじめ分娩の日を決め、分娩日の前日に入院をして準備を行います。
分娩日の決定
計画無痛分娩を希望する場合でも、自由に日程を決められるわけではありません。医師の判断のもとに決めることになります。
- 妊娠週数に誤りが無いこと
- 妊娠37週以降であること(正期産といわれ、赤ちゃんが生まれてもよい週数以降)
- 妊娠の経過や内診所見などからお産の準備が整っていると判断できること(子宮口が柔らかく、開きやすい状況になっていることも大切)
母体や赤ちゃんに何らかの問題がある場合は、分娩の準備が整っていなくても分娩誘発が必要となることもあります。そのようなときには、必ず主治医から説明があります。分娩日は様々な観点から決定されるため、医師の判断により、日程が希望通りにいかないこともあります。(記念日などの理由でこの日に産みたいという希望があっても、叶わないこともあります)
分娩日の前日に入院する
分娩日の前日に入院し、子宮口を広げるために医療用バルーン(ラミナリア等)という器具を挿入します。バルーンは水分を含んで徐々に膨らみ、人工的に子宮口を開かせます。硬膜外チューブ(カテーテル)留置等、硬膜外麻酔を行う準備もします。麻酔チューブを入れるためには、太めの注射針を刺す必要があるため、事前に局所麻酔をしたうえで行います。
麻酔チューブを入れた後は、基本的に産後許可が下りるまでシャワーに入れません。入院前に自宅でシャワーを浴びてから入院するようにしましょう。絶食のタイミングは病院ごとで異なります。当日の朝食までは摂り、麻酔を開始してから絶食(飲み物は水やお茶の等の指定あり)という場合や、前日から絶食を行う場合があります。医師の指示に従いましょう。
自然に陣痛が始まってからの無痛分娩の場合
自然に陣痛が起きるのを待ってから行う無痛分娩の場合、陣痛が開始したら病院に行き、麻酔を打つかどうかの判断が行われます。
内診をして麻酔を打つかどうかを決める
病院に到着したら、内診をし子宮口の状況を確認します。だいたい子宮口が3〜5㎝程度開き、陣痛が5〜10分間隔であれば麻酔の準備を行います。子宮口が3㎝未満で、陣痛間隔が10分以上の場合は、陣痛が引いてしまう可能性もあるので、麻酔を開始せずに陣痛室でお産が進行するのを待つこともあります。
無痛分娩当日
血圧計を装着し、麻酔中に血圧が下がらないよう血液量を増やしておくための点滴を行います。計画無痛分娩の場合は陣痛促進剤※を投与して、陣痛が来るのを待ちます。
陣痛の痛みが出てきたら、硬膜外麻酔を投与します。子宮口が全開になってから、分娩室で分娩を行うことが多いようです。(流れは経腟分娩と同じ)
麻酔は、1時間〜1時間半で切れますので、状況に合わせて追加していきます。
※陣痛促進剤:人工的に作られたホルモン。子宮収縮を促すオキシトシンやプロスタグランジンという物質。このホルモンが体内に入ることで人工的に陣痛が起きる。
麻酔後のトイレはどうする?
麻酔が効いてくると脱力感が生じ、転倒の危険があるため、トイレは助産師が介助します。しかし、麻酔によって足の力が弱くなったり足がしびれたりすることや、尿意がなくなって尿を出すこと自体も難しくなることがあるため、ベッドの上で尿道に管を通して尿を出す導尿(どうにょう)を行う場合も多いです。なお、自然分娩の場合も同様に、分娩台に上がってからはトイレに行くことはできません。
無痛分娩の所要時間
陣痛が始まり子宮口が開けば、分娩台に乗って通常通りのお産を行います。一般的に分娩の所要時間は以下の通りと言われています。
- 初産婦の場合 12〜15時間
- 経産婦の場合 5~8時間
上記はあくまで平均であり、初産でもすぐに生まれたり、数日かかったりする場合もあります。
誘発分娩は上記にプラスして、陣痛促進剤を投与してから「陣痛が起きるまでの時間」がプラスされます。これにも個人差があり、3〜4時間の人もいれば、2〜3日以上かかる人もいます。平均値はあくまで参考であり、お産にかかる時間は個人差があります。
当日中に生まれない場合は翌日に再開する
誘発分娩によるお産も個人差があるので、計画通りに陣痛促進剤の投与を開始したとしても、その日のうちに生まれるとは限りません。子宮口が開ききらなかったり、陣痛が弱まってしまい、母体の体力を踏まえて陣痛促進剤をこれ以上追加するのは厳しいと医師が判断すれば、その日の分娩は中止とし、翌日に改めて再開することもあります。
立ち会い出産を希望する場合
病院が許可していれば、無痛分娩でも夫やパートナーの立ち会い出産は可能です。病院によって、「病院が実施する指定の教室を受講していること」などの条件がありますので、詳しくは産院に確認をしましょう。
無痛分娩ができないケース
以下のような場合は、無痛分娩を行うことができません。
- 腰椎骨折や、極度の側彎(そくわん)、腰椎手術の経験のある方
- 麻酔薬にアレルギーのある方
- 血液が固まりにくい方
- 妊娠前から肥満体型の方(程度は病院による)
- その他病院による(身長150㎝未満の方はNGとしている病院もある) など
無痛分娩でのいきみ方
無痛分娩の場合、麻酔により陣痛の痛みは和らぎますが、下半身の感覚が完全になくなるわけではありません。無痛分娩であっても、いきむ力で赤ちゃんは産まれます。赤ちゃんが下りてくる間隔や子宮の収縮はある程度感じられるので、タイミングを合わせてゆっくりといきみながら分娩をすすめます。
痛みが和らいでいると、いきむタイミングやいきみ方が分かりづらいので、医師や助産師の指示に従って腹圧をかけましょう。
無痛分娩でも痛みはある?
無痛分娩でも、生理痛、またはそれ以上の痛みを感じる方もいます。痛みの程度は妊婦さんそれぞれで異なりますが、普通分娩よりも楽に出産できたと感じる方が多いようです。
無痛分娩のメリット・デメリット
分娩の痛みを和らげることができる無痛分娩には多数のメリットがありますが、デメリットもあります。両方を理解した上で、妊婦さん本人や家族の都合に合わせて検討しましょう。
無痛分娩のメリット
- 出産の痛みが和らぐ
- 痛みに弱い人や分娩への恐怖心が強い人でも安心してお産に臨める(ストレス軽減)
- 母体の負担を減らすことができる
- 緊急帝王切開となった場合に、自然分娩に比べ、短時間で切り替えが可能であること
無痛分娩といえば、出産に伴う痛みが和らぐことが最大のメリットといえます。完全に痛みがなくなるわけではありませんが、体力の消耗が少なくて済みます。そのため産後の回復が早いと感じる人も多いようです。
また、心臓の病気や血圧が高い方(妊娠高血圧症候群など)には母体への負担を軽減する目的で、医師が無痛分娩を勧めることもあるようです。
無痛分娩のデメリット
無痛分娩による赤ちゃんへの影響はほとんどないとされていますが、デメリットがないわけではありません。
- 自然分娩に比べお産が長引く傾向にある
- 鉗子分娩・吸引分娩の割合が増える
(麻酔によりお産の進みが悪くなったり、妊婦さんのいきむ力が弱くなったりすることがあるため、自然分娩に比べると分娩時のサポートが必要となる) - 出血量が増える
(産後、子宮は収縮して自らの出血を止める働きをするが、微弱陣痛や分娩遷延によって子宮筋が疲労して収縮が進まず、子宮筋が緩んで多量に出血する「弛緩出血」を起こすことがある) - 麻酔による副作用や合併症リスクがある
副作用、合併症の例
自然分娩、無痛分娩、帝王切開、いずれの分娩方法でも、絶対に大丈夫ということはありません。以下に一般的な症状と、稀に起こることがある重い症状をご紹介します。
一般的な症状
- 足の力が入りにくくなりことがある
- 排尿感が弱くなることがある
- 血圧が低下することがある
- 体温が上がることがある
稀だが重い症状
- 予期せず、脊髄くも膜下腔に麻酔薬が入り、重症の場合は呼吸ができなくなったり、意識を失ったりすることがある
- 血液中の麻酔薬の濃度が高くなり、中毒症状がでることがある
- 麻酔の針の影響で強い頭痛が起こることがある(場合によっては、処置が必要になることも)
- 硬膜外腔や脊髄くも膜下腔に血のかたまりや膿がたまり、手術が必要になることがある
医療は日々進歩し体制も整い、リスクは軽減されています。どの分娩方法でも、起こり得るリスクについて病院は事前にきちんと説明をしてくれますので、不明点があれば質問し、ご自身がきちんとメリット・デメリットを理解したうえで、お産に臨むようにしましょう。
まとめ
無痛分娩には、計画無痛分娩と自然に陣痛が来るのを待ってから行なわれる方法の二種類があります。無痛分娩を実施している病院であれば、妊婦さんの希望により選択することが可能です。無痛分娩は保険適用外のため、通常の分娩費用以外は全額自己負担になり、一般的に+10~20万円程度かかります。無痛分娩のメリットとデメリットを知り、ご自身に合う分娩方法を選ぶようにしましょう。
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なおファミリーの他のマンガを読んでみよう
他のマンガにもコメントが届いています。
良かったねー‼︎
大変〜
これで安全に支障がでたら、どうするつもりなんだろうね国は、従来の10歳まででいいよ