

マンガ「食物アレルギー(基礎知識)」












そもそも「アレルギー」とは?
私たちの体には、有害な細菌やウイルスなどの病原体から体を守る「免疫」という働きがあります。アレルギーは、この「免疫」が特定の物質(アレルゲン)に対して過敏に反応してしまう状態のことをいいます。
アレルギーは本人の体質だけでなく、生活している環境や生活習慣など、多くの要素が複雑に絡み合って発症します。
食物アレルギーとは
食物アレルギーとは、特定の食べ物に含まれる「アレルゲン」に、本来は体を守る働きである「免疫」機能が過剰に反応して、体にさまざまな食物アレルギー症状をおこすものです。食べ物は栄養源として消化吸収されるものですが、特定の食材がアレルゲンであると体が判断し、害があるものとみなして排除しようとすることで、食物アレルギー症状がおこるとみられています。また、食物アレルゲンは口から摂るだけでなく、皮膚に接触したり吸いこんだりしたときにアレルギー症状が起こることもあります。その場合も食物アレルギーといいます。
まずは知るところから!子どものアレルギー性疾患
アレルギー性疾患のうち、乳児が特に発症しやすいものは、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎です。
子どものアレルギーで代表的な症状
- 皮膚症状
赤み、じんましん、腫れ、かゆみ、しゃく熱感、湿疹 など - 目・口・鼻・顔の症状
目の充血・かゆみ、まぶたのはれ、くしゃみ、鼻汁、鼻づまり、口・のどの中の違和感、唇・舌のはれなど - 呼吸器の症状
せき、呼吸困難など - 消化器の症状
腹痛、下痢や嘔吐など - 全身の症状
血圧低下、脈が速い、脈が触れにくい、脈が不規則、手足が冷たい、顔色・唇や爪が白い、頭痛、元気がない、ぐったり、不機嫌、意識もうろう、尿や便を漏らす(失禁) など
※症状の程度は個人差があります。

食べていないのにアレルギー症状!?
近年、乾燥や湿疹などでバリア機能が低下している皮膚から食物が入り込むことによって、食物アレルギーが発症するという仕組みが分かってきました。食物アレルギーの予防には、生後1~2か月頃から保湿(スキンケア)と早期のアトピー性皮膚炎の治療を行い、まずは赤ちゃんのお肌を健康な状態に保ってから、生後5~6か月から離乳食を始めることが大切であるといわれています。
また、食事の際にお肌に付いたままになっていた食材や調味料などの刺激によってかぶれた状態を、アレルギーではないかと心配になるケースもあるそうです。離乳食を食べさせる際のお肌の状態も丁寧に見てあげましょう。

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確定診断が難しい皮膚症状
小児期は、アトピー性皮膚炎を皮切りに、食物アレルギーや喘息などほかのアレルギー疾患が次々と出てくることがあります。これを「アレルギー・マーチ」と呼びますが、その症状がどのアレルギーに由来しているのか、特定が難しいといわれています。特にデリケートな皮膚である乳児においては、アトピーによる湿疹なのか食物アレルギーによる湿疹なのか、診断を確定させることにも時間を要することが多いのが現状です。
離乳期の食物アレルギーでよくみられる症状
食物アレルギーは、じんましんや紅斑(皮膚が赤くなること)、かゆみ、浮腫(むくみ)が一番多い症状です。ほかには、咳・喘息発作、嘔吐・腹痛・下痢などの症状が出る場合もあります。離乳期によくみられる食物アレルギーには、即時型アレルギー、非即時型アレルギー(食物たんぱく誘発胃腸症など)があります。
即時型アレルギー
即時型アレルギーは、食後2時間以内(多くは食べた直後から30分間)に起こるものをいいます。じんましんやかゆみなど、いわゆる「食物アレルギー」と聞いてイメージするような症状のほとんどがこれに該当します。
食物アレルギー診療ガイドライン2016によると、即時型食物アレルギーで出る症状は、皮膚症状92%、呼吸器症状33.6%、粘膜症状28.0%、消化器症状18.6%で、ショックも10%程度みられるようです。
即時型アレルギーの特殊なタイプとして、特定の果物や生野菜を食べたあとに口の中がピリピリする症状が出る「口腔アレルギー症候群」や、小麦や甲殻類などのアレルゲンを食べた後、運動することによってアレルギー症状が出る「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」などもあります。
食物たんぱく誘発胃腸症(消化管アレルギー)
食物たんぱく誘発胃腸症の場合、新生児から乳児期において、原因となる食物(育児用ミルクなど)を摂取してからしばらくして、嘔吐や血便、下痢などのお腹の症状、また体重が適切に増えない、などの症状がみられます。母乳をずっとあげていた乳児が育児用ミルクを飲ませたことによって気付くケースもあると言われています。
アレルギーを起こしやすい食材とは?
食物アレルギー表示義務8品目

小麦

卵

乳

えび

かに

くるみ

そば

落花生
これらの食材は、市販の加工食品パッケージでも原料に含まれるか明記することが定められています。
その他のアレルギー表示推奨20品目
- アーモンド
- あわび
- いか
- いくら
- オレンジ
- カシューナッツ
- キウイフルーツ
- 牛肉
- ごま
- さけ
- さば
- 大豆
- 鶏肉
- バナナ
- 豚肉
- マカダミアナッツ
- もも
- やまいも
- りんご
- ゼラチン
※消費者庁「アレルギー表示に関する情報 アレルギー表示とは」(2025年1月時点)
食品の表示をチェックしよう
離乳期の段階に合わせた調理形態に調整しづらいものは、あえて前倒しして与える必要はありません。噛む力の目安に沿って少しずつ試してみましょう。特に該当食材が多い卵・牛乳・小麦は、用途が多く、つなぎの目的で少量使用される加工品などに含まれるケースもあります。誤食を避けるため、食品の表示にて確認する習慣があると良いでしょう。
食物アレルギーと離乳食の進め方
はじめての食材を与えるとき
離乳食で子どもにはじめての食材を与えるときは、以下のポイントを心がけましょう。
- 新鮮なものを選ぶ
- 子どもの体調や機嫌がよいタイミングで与える
- 1種類ずつ与える(同じタイミングで複数の食材を試さない)
- 十分に加熱する
離乳食は少量からスタートします。特に発症数が多い卵に関しては、卵からの栄養を摂るためという目的よりもアレルギー反応が出ないかどうかを主とするため、極少量からスタートしますが、問題なければ倍のペースでどんどん進めても構いません。そのほかの食材については少量ずつと慎重にしなくても大丈夫です。
万が一何かあったときすぐに受診できるように、病院の診療時間内に試すとよいでしょう。
離乳食期に気を付ける食材
アレルギーのほかにも、食中毒症状や病気を引き起こす可能性があるため、与えないよう注意すべき食材があります。
はちみつ…乳児ボツリヌス症と食中毒の可能性あり
はちみつ内のボツリヌス菌から作られる芽胞が腸内で増えて毒素を出すため、まだ腸内環境が整っていない乳児がはちみつや黒糖、コーンシロップを摂取すると、乳児ボツリヌス症にかかることがあります。そのため、1歳未満の乳児には与えないでください。
ボツリヌス菌は熱に強いため、通常の加熱調理では予防できません。パンやお菓子・ジュースなどに対象の食材が含まれている場合がありますので、気を付けましょう。
乳児ボツリヌス症を発症すると、多くは便秘症状から始まり、次第に頭部から全身にかけて筋肉の麻痺が起こり、泣き声が弱々しくなる・哺乳力が小さくなる・ぐったりしたように見えるなどの症状があらわれます。重症の場合は呼吸困難を引き起こしたり、過去に死亡事例も起きているため、注意しましょう。
なお、1歳以降は乳児ボツリヌス症の発症はありません。お砂糖の代わりの甘味として活用するのもよいでしょう。
生魚…食中毒の可能性あり
刺身などの「生食」は、食中毒菌が付着しているリスクが高いといえます。鮮度のよい魚を、十分に加熱して与えましょう。鮮度がよくないことが原因で、「ヒスタミン中毒」の恐れがあります。マグロ、ブリ、カツオ、カジキ、サバ、イワシなどの青魚で起きるケースがあります。
離乳中の食材選び
医師から除去するように指示されているもの以外は、子どもの月齢にあわせてひと通りの食材を与えるようにしましょう。漠然とした不安から必要以上に食べられる食材の選択を狭くすることで、かえって栄養バランスが偏る可能性があります。不安な場合は自己判断で除去せず、医師の指示や、栄養士などに相談しながら進めていくようにしましょう。
食物アレルギーって予防できる?
現在、食物アレルギーの予防に関しては研究段階のものが多く、エビデンスが十分でない情報がSNSなどで拡がることがあるので、過度に心配したり、逆に軽視したりすることのないよう気を付けましょう。
妊娠中・授乳中はママが食べ物を除去すればいい?
強い既往歴などがない方の場合、妊娠中や授乳中にママが卵や牛乳などを除去しても、予防効果はありません。むしろ必要な栄養が補えない食事バランスに陥りやすいため、必要以上に避けることは推奨されていません。
離乳食の開始を遅らせるといい?
湿疹やアトピー性皮膚炎がある乳児であっても、離乳食の開始を遅らせることは推奨されていません。必要以上に避ける必要はないでしょう。食物アレルギーが一番出やすいとされる卵についても、アレルギー発症予防を目的に、医師の管理(保湿なども含む)のもと、生後6か月ごろから微量摂取を開始することが推奨されています。
アレルギーは遺伝するの?
アレルギーのある親から生まれた子どものほうがアレルギー疾患になりやすいという報告もありますが、どのように遺伝するのかなどは、はっきりしていません。
食物アレルギーに限らず、アレルギーは体質・環境・習慣など多くの要因が重なることで発症します。これらのうち体質的な要因については遺伝する可能性がありますが、そのほかの要因が揃っていなければ発症確率は低くなるとされています。
まとめ
子どものアレルギーのうち、離乳食と食物アレルギーは関わりが深いものです。発症リスクは誰にでもあるため、まずは基礎を知り、食べさせる時期や調理方法などを確認して、食後は様子をよく観察するようにしましょう。不安なことは必ず専門家の意見を聞いて、子どもの成長を支えていきましょう。

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自分を変えようとするのっていいね
子供が強い と無理だよね
ポジティブだね